いろんな心と秋の空

夏真っ盛りみたいな雲だ
近況
こんにちは! あるいは、こんばんは!
平素より中野店をご愛顧いただきありがとうございます。CAの荻原です。
本来であれば肌寒く、一足先に冬のおとずれを予期する時分。みなさま、平らかにお過ごしでしょうか。
侘しいことながら、年ごとに秋は短くなってしまっていますね。
憂いのあまり、最近は線香花火の寿命=秋の寿命なのでは、と荒唐無稽なことを考えています。
せめて少しでも、うだるような暑気に秋がかき消されてしまわないように……と、当店でも先月からレイアウトをちょっぴり秋めかせております。
ウネウネしたアリの行列みたいな配置の落ち葉がポイントです。
ハロウィンになったらもう少し紫色が増えるかもしれません。

ほかにも、食欲の秋ということで六種類のもみじ饅頭をご来店いただいた方にお配りするキャンペーンを開催していました(※現在は終了しております)。

きのこ・たけのこ戦争と双璧を成すであろうつぶあん・こしあん戦争が最終的に勃発し、どちらが先に減りきるかな? とフロントから内心で賭けに興じる日々でございました(敗けました こしあんに賭けていたのに)
今週のよもやま話
10月なのに、暑~い!!!!
第一声からこんな調子で大変申し訳ございません。
昨夜は降雨のせいか、私室の構造のせいかびっくりするほど蒸し暑く、寝苦しくてまともに眠れなかったことを根に持っています。お目こぼしください。
来月こそはつつましやかな冒頭を書きたいものです。
先週は「来週はもしかしたら紅葉始まってるかも!」のようなことを書いた覚えがございますが、少なくとも私が観測している景色のなかではまったくそんなことはなく、まだまだ青々とした剛き山岳がそばだっておりますね。

ですが、こころなしか空の青や山の緑が暗く濃くなっているような気もしますから、気候はともかく視界はだんだんそれらしくなる……かも、しれません。
空模様によって影が落ちているだけの可能性もありますが、時の流れに期待しましょう。
さて、空模様といえば。
今回の本題ですが、「女心と秋の空」ということわざがございます。
うつろいやすい秋空のご機嫌に、ひとの感情の起伏や気持ちの変わりやすさを重ねたもの。ご存じの方も多いのではないでしょうか?
さかのぼって江戸時代から使われていたことわざで、もともとは「男心と秋の空」といわれ、おもに男性の移り気をさしていました。
「秋」は「飽き」にも通ずる掛け詞となっており、洒落好きな江戸文化にも受け入れられ、次第に定着していったようです。
そこから明治時代にかけ、西洋文化が流入していきます。
そんなさる明治時代、小説家・尾崎紅葉は、自著『三人妻』にて、「男心と秋の空」に触れたうえで、関連するヨーロッパのことわざについて次のように言及していました。
欧羅巴の諺に女心と冬日和といえり
この「女心と冬日和」は、英語圏に語られる「A woman’s mind and winter wind chan(女性の心情と冬の風はよく変わる)」という格言を示しており、そうしてさまざまな出来事を経て「女心と秋の空」という今の表現に変じ、日本独自のことわざとして広まっていった――とされています。
そして、室町期の狂言『墨塗』には、在京中の大名の移り気を風刺する趣旨や、「男心と秋の空は一夜にして七度変わる」といったせりふが版によって登場することから、古来よりの鉄板ネタだったのかもしれません。
また、かの小林一茶も、このように詠んでいます。
はづかしや おれが心と 秋の空
遠き時代に生きた彼もこうやって恥じて内省することがあったのだなあ、と、なんだか身近に感じてしまいます。
ただ、現代では性別にかかわらず、誰しも気持ちが揺れることはあるもの。多様な価値観が尊重される今、こうした言葉も“人の心と秋の空”と読み替えてみるのも面白いかもしれませんね。
ことわざひとつにもめいっぱいの歴史が詰まっていておもしろいですが、いつか日本では四季という概念が過去のものとなり、こういった逸話も風化してゆくのかな……という憂慮を挟んだところで、今回はここまでといたします。
漫画でも、活字でも、新聞でもなんでも、無理のない範囲で文学に触れていきたいものです。
私は秋といえば圧倒的に📕読書!📙の季節です。みなさまも、お気が向かれたらぜひご自宅にある本を開いてみてはいかがでしょうか。
(当店にも雑誌や、キッズコーナーには漫画のご用意がちょっとございます!)
どうやら台風が勢力を増しながら日本列島の南側を通っていくようです。長野県への影響は未知数ですが、寒暖差による体調不良と併せてどうかご用心くださいね。
それでは、貴重なお時間を割いてご一読いただき、ありがとうございました!
いつでもご来店をお待ちしております。
P.S. 荻原が特に愛読させていただいているのは、国木田独歩先生、筒井康隆さん、ジョージ・オーウェル氏、以上お三方の作品です。(好みは分かれますが)『忘れえぬ人々』『残像に口紅を』『一九八四年』を、読もう!